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辰巳柳太郎(1905~1989)

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辰巳 柳太郎(たつみ りゅうたろう)

俳優
1905年(明治38年)〜1989年(平成元年)

1905年(明治38年)、兵庫県赤穂郡坂越村(現在の赤穂市)に生まれる。本名は、新倉 武一。少年時代に養子に出され、養家を13件も転々としながら関西甲種商業学校(現在の関西大学第一中学校・高等学校)を経て、商業学校(現在の大阪市立天王寺商業高等学校)を中退。1919年(大正8年)、小林一三が国民劇創設のため作った「男子養成会」の創設メンバー(男子専科生第一期生)として宝塚入り。しかし、1926年(大正15年)に旅回りの一座に入り、長野県で初舞台を踏む。半年後、小林一三主宰、坪内士行文芸部長の「宝塚国民座」に入団し、東吾作の名で舞台に立つ。その後、澤田正二郎の魅力に惹かれ、1927年(昭和2年)に道頓堀の浪花座で公演中の澤田を楽屋に訪ねて弟子入りを直談判する。沢田は黙ってうなずいたが、それきりナシのつぶてとなり、業を煮やした辰巳は沢田に宛てて「オトコノヤクソクドウシタ」と電報。これには沢田も参って入門を許可し、同年5月に新国劇への入団を許される。同年、『国定忠治』の素通りの篭駕かきでデビュー。目立つ存在ではなかったが、当の本人は沢田に惚れこみ、畏敬するあまり役者としての大成などまったく考えてなく、師匠の下働きを懸命につとめることにひたすら充実感をおぼえていた。それだけに沢田には可愛がられ、師匠の澤田が辰年、本人は巳年生まれだったことから、芸名を辰巳吾作(後に柳太郎)と改めた。1929年(昭和4年)、澤田が急死。「沈着冷静な島田と明るく奔放な柳太郎を合わせると澤田の芸風に似たものが出来る」と考えた俵藤丈夫文芸部長により、島田正吾とともに澤田の後継者に大抜擢される。同年、『国定忠治』に主演したのをはじめ、『大菩薩峠』『宮本武蔵』『無法松の一生』など、豪放で生きのよい演技を展開。島田とともに新国劇の二本柱として沢田没後の新国劇の興隆と存続に尽くした。また、その気質は島田と合わせて「動の辰巳、静の島田」とも呼ばれた。1947年(昭和22年)、辰巳自らが坂田三吉を主人公で描くように依頼をし、北条秀司が脚本の執筆と演出を担当した『王将』が大ヒット作となる。戦後になると映画界に進出し、1949年(昭和24年)に田坂具隆監督『どぶろくの辰』(大映)で、舞台の当たり役だった辰を熱演。次いで、マキノ雅弘監督『武蔵と小次郎』(松竹)に島田の小次郎に対して武蔵を、野村芳太郎監督『鞍馬天狗・青面夜叉』(松竹)に島田の天狗に対抗する小山田内記を、佐分利信監督『叛乱』に永田軍務局長斬殺犯人・相沢三郎中佐を演じた。1954年(昭和29年)3月、日活の製作再開とともに劇団ぐるみで同社と契約。6月封切りの再開披露作品『国定忠治』では、菊島隆三の脚本により舞台の忠治とはちがった新解釈の忠治を伸び伸びと演じた。1955年(昭和30年)には黒澤明と菊島の脚本で撮影技師の三村明が初監督した『消えた中隊』で、悲劇的運命にさらされるソ満国境守備の将校を主演した。1969年(昭和44年)、紫綬褒章を受章。1976年(昭和51年)、勲四等旭日小綬章を受章。その後、大衆演劇の衰退とともに劇団新国劇の観客数も減少。1979年(昭和54年)には一度倒産し、その後再建したが、苦しい経営が続き、1987年(昭和62年)の70周年記念公演終了をもって劇団は解散した。その後は東宝系諸劇場や明治座などに重要な脇役として活躍していた、1988年(昭和63年)の夏頃から体調を崩し、寝たきり状態となる。1989年(平成元年)2月、肺炎を起こして1ヶ月間入院。4月12日、肺炎を再発したことから東京都港区の山王病院に入院し、危篤状態となる。7月29日午後9時45分、心不全のため死去。享年84。


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新国劇の看板俳優であった辰巳柳太郎。沢田正二郎亡き後、島田正吾とともに新国劇を支え、「動の辰巳、静の島田」と並び称された。特に「国定忠治」の公演は通算3000回を超えるほどの当たり役となった。その見事な節回しと鮮やかな剣さばきに魅了された者は多く、大友柳太朗や緒形拳といった実力派のスターを育て上げた。新国劇の終焉とともに世を去っていった辰巳柳太郎の墓は、静岡県駿東郡の冨士霊園にある。洋型の墓には「新倉家」とあり、背面に墓誌が刻む。また、左側に生前の言葉を刻んだ碑が建つ。戒名は「勤徳院釋浄?」。

by oku-taka | 2023-12-21 11:50 | 俳優・女優 | Comments(0)