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千秋実(1917~1999)

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千秋 実(ちあき みのる)

俳優
1917年(大正6年)〜1999年(平成11年)

1917年(大正6年)、北海道中川郡恩根内村(現在の美深町)に生まれる。本名は、佐々木 勝治(ささき かつじ)。旧姓は森竹。幼少期に上砂川町に移住。小学校卒業後に札幌の北海中学校に入学。陸上部に所属し、400m走者・跳躍選手として活躍。母校の先輩になぞらえて「第二の南部忠平」と呼ばれるほどの有望選手だったが、足首捻挫で陸上競技を断念。子供の頃から芝居が好きだったことから俳優を志し、東京にいた兄を頼って上京。代々木の名教中学(現在の東海大学付属浦安高等学校)に転校する。1936年(昭和11年)、中央大学専門部法科に入るが、新築地劇団に研究生として入団。同年11月の同劇団公演『女人哀詞』で初舞台を踏む。芸名は、研究生時代に劇団員で尊敬していた山本安英に付けてもらったという。1938年(昭和13年)3月、多々良純らと共に関西公演の出発直前に劇団を脱退。五月座を結成するが、1939年(昭和14年)3月の大学卒業と同時に兵役に就き、歩兵第26連隊に入隊。これにより五月座は自然消滅する。軍隊では樺太・上敷香の国境警備隊に勤務し、1942年(昭和17年)7月に除隊。同年8月、俳優で演出家の佐々木孝丸の1人娘である女優・佐々木踏絵と結婚する。その後、移動演劇隊・ほがらか隊の隊長として終戦まで各地を巡演する。1946年(昭和21年)5月、踏絵とともに薔薇座を結成し、久藤達郎原作の『新樹』を旗揚げ公演として神田一ツ橋の共立講堂で上演する。西洋演劇本位の新劇に反発して、日本の劇作家による、大衆性のある演劇を目指し、菊田一夫原作の『東京哀詞』『堕胎医』を始め、『お前もまた美しい』『長崎の鐘』『冷凍部隊』などの創作劇を上演。このときに現代劇という呼称を初めて使ったといわれている。特に『堕胎医』の評判はよく、この舞台を観た黒澤明によって1949年(昭和24年)に『静かなる決闘』の題名で映画化された。これが縁で黒澤にすすめられて『野良犬』にレビュー劇場の演出家役で映画初出演。これを機に薔薇座を解散し、以降は映画俳優に転向する。映画では一時、東京映画や東映と本数契約を結んだこともあるが、フリーとして多くの映画に出演。特に黒澤作品には中心的脇役として『七人の侍』『羅生門』『白痴』『天国と地獄』など計11本に出演。なかでも『隠し砦の三悪人』で藤原釜足と演じた農民コンビは、ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』に登場した2体のロボット(R2-D2とC-3PO)のモデルとなった。1960年代からはテレビドラマにも出演するようになり、乙羽信子と夫婦役を演じた『ママちょっと来て』でお茶の間の人気を集め、その後も『おふくろの味』『肝っ玉かあさん』などのホームドラマに父親役として多数出演した。1975年(昭和50年)、ドラマ『微笑』で高峰秀子と共演するが、生田スタジオで収録中に脳内出血で倒れて入院。1976年(昭和51年)のドラマ『喜びも悲しみも幾歳月』でカムバック。そこに至るリハビリの過程は、1979年(昭和54年)に『生きるなり』(文藝春秋)として刊行し、ベストセラーとなった。1985年(昭和60年)、伊藤俊也監督『花いちもんめ。』での認知症と向き合う考古学者役で第9回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、ブルーリボン賞主演男優賞、アジア太平洋映画祭主演男優賞、毎日映画コンクール演技特別賞を受賞。1989年(平成元年)、勲四等瑞宝章を受章。1999年(平成11年)11月1日、急性心肺不全のため東京都府中市内の病院で死去。享年82。


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黒澤明監督作品の常連俳優として知られる千秋実。黒澤に見出されて映画俳優へと転身し、『七人の侍』『隠し砦の三悪人』『羅生門』『蜘蛛巣城』など黒澤作品に計11作出演。晩年には脳出血で倒れたが、奇跡的な復活を遂げ、その後に出演した映画で圧巻な演技を見せて賞を総なめにし、日本映画の名優っぷりを示した。とぼけたような口調の味わい深い演技が魅力だったが、素の顔としても、三船敏郎が亡くなった際に稲葉義男がまだ存命であったにもかかわらずる「これで七人の侍の中で残っているのは、僕一人だけになってしまいました」とコメントしてしまうなど、若干の天然さもあった。『七人の侍』では一番早くに亡くなってしまうが、実生活では最後まで存命だった千秋実。今は妻・佐々木踏枝とともに静岡県駿東郡の冨士霊園で眠りについている。墓には「佐々木家」とあり、右側に墓誌が建つ。

by oku-taka | 2023-11-08 00:30 | 俳優・女優 | Comments(0)