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市原悦子(1936~2019)

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市原 悦子(いちはら えつこ)

女優
1936年(昭和11年)〜2019年(平成31年)

1936年(昭和11年)、千葉県千葉市に生まれる。中学校2年生で千葉市末広中学校に転校。ここで演劇クラブに入り、教師から演劇の楽しさを教わる。千葉県立千葉第一高等学校(現在の県立千葉高校)に進学すると、演劇部で活動。伊藤貞助作の『村一番の大欅』で県大会に出場し、個人演技賞を受賞した。高校卒業後、富士銀行に就職が決まっていたが、演劇への思いが断ちがたく、劇団俳優座養成所に6期生として入所する。同期には近藤洋介、宮部昭夫、川口敦子、大山のぶ代、阿部百合子、阿部六郎、佐伯赫哉、山本清らがいた。1957年(昭和32年)、劇団俳優座に入団し、『りこうなお嫁さん』でデビュー。同年、『びわ法師』で雑誌『新劇』の新人推賞を受賞。1959年(昭和34年)、『千鳥』で第14回芸術祭賞演劇部門芸術祭奨励賞を受賞。1961年(昭和36年)、養成所同期の演出家・塩見哲と結婚。2度の流産で子どもには恵まれなかったが、おしどり夫婦として知られた。1962年(昭和37年)、『三文オペラ』で雑誌『新劇』の演劇賞を受賞。1964年(昭和39年)、『ハムレット』で第2回ゴールデン・アロー賞の新人賞を受賞。新劇女優として高い評価を受ける。しかし、1971年(昭和46年)10月に夫とともに退団。1972年(昭和47年)に番衆プロを設立する。1975年(昭和50年)、『トロイアの女』で第9回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。同年、テレビアニメ『まんが日本昔ばなし』が放送を開始。すべての登場人物の声を常田富士男と2人のみで長年演じ続けた。また、TBSの昼ドラマ『赤い殺意』で強姦された強盗と恋に落ちるという主人公の主婦を演じ、17.5%と当時の放送時間帯としては高視聴率を獲得した。1983年(昭和58年)、『家政婦は見た!』に主演。シリーズは好評で高視聴率を獲得し、四半世紀以上に渡って演じ続ける当たり役となる一方、土曜ワイド劇場を代表する作品ともなった。1987年(昭和62年)4月、「有限会社ワンダー・プロダクション」を設立。夫の塩見が社長となった。1990年(平成2年)、映画『黒い雨』の演技により第13回日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を受賞。テレビ界においても、フジテレビ『おばさんデカ 桜乙女の事件帖シリーズ』、NHK大河ドラマ『秀吉』、TBS『弁護士高見沢響子シリーズ 』と立て続けに出演した。1998年(平成10年)、映画『うなぎ』で第21回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。1999年(平成11年)、『ディア・ライアー』で第6回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。2003年(平成15年)、映画『蕨野行』で第27回山路ふみ子映画賞の山路ふみ子女優賞を受賞。2009年(平成21年)、演劇企画集団THE・ガジラ『ゆらゆら』で第16回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。2012年(平成24年)2月、S状結腸腫瘍手術のため、映画『東京家族』をクランクイン前に降板。同年9月に復帰したが、2014年(平成26年)4月には53年間連れ添った夫の塩見哲と死別。以降、体調を崩しがちとなり、同年10月には朗読劇の製作会見を風邪で欠席。2017年(平成29年)1月13日、自己免疫性脊髄炎の加療のため休業を発表。6月27日に翌年のNHK大河ドラマ『西郷どん』のナレーションでの復帰が発表されたが、11月22日には体調が優れないことを考慮して降板。2018年(平成30年)3月21日放送のNHK『おやすみ日本 眠いいね!』で1年5ヶ月ぶりに仕事復帰したが、同年12月下旬に盲腸のため入院。手術は行わず投薬治療を行い、一時復調して正月を自宅で過ごすが、再び体調を崩して2019年(平成31年)1月5日から入院。1月12日午後1時31分、心不全のため東京都の病院で死去。享年82。


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独特の存在感で個性派女優としての地位を築いた市原悦子。俳優座時代は高い演技力で賞を総なめにし、演出家の浅利慶太からは「戦後新劇の生んだ最高の女優」と賞賛された。活動の場をテレビに移した後も、その優れた演技力で次々に当たり役を生み出し、アニメ『まんが日本昔ばなし』では味わい深い語りを一人何役もこなし、ドラマ『家政婦は見た!シリーズ』では上流家庭内のスキャンダルを覗き見し、最後にはその家庭を滅茶苦茶にしてしまう家政婦をコミカルに演じた。特に『家政婦は見た!シリーズ』は市原の唯一無二ともいえる存在感と、個性的すぎる演技に魅了され、個人的にも大好きな作品であった。「超」が付くほどの個性派女優・市原悦子の墓は、千葉県袖ヶ浦市の真光寺にある。墓は樹木葬で、エノキの木の下に「塩見哲 市原悦子」と彫られた墓碑が埋められている。本名の塩見悦子にしなかったのは、生前本人が「それじゃあファンの方がいらしてもわかんないわね」ということから、旧姓が墓誌に刻まれた。戒名は「遊戯悦楽信女」。

by oku-taka | 2023-08-16 12:47 | 俳優・女優 | Comments(0)