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上村一夫(1940~1986)

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上村 一夫(かみむら かずお)

漫画家
1940年(昭和15年)〜1986年(昭和61年)

1940年(昭和15年)、神奈川県横須賀市に生まれる。1964年(昭和39年)、武蔵野美術大学デザイン科を卒業。大学4年生の時に半年間アルバイトで勤務していた広告代理店・宣弘社のイラストレーターとして広告制作に携わる。宣弘社にてテレビの絵コンテを描いていた上村の隣のデスクに座っていたのが生涯の友人となる阿久悠であった。阿久の勧めで劇画の世界に入り、1967年(昭和42年)にアメリカの雑誌『PLAYBOY』風のパロディ漫画『カワイコ小百合ちゃんの堕落』を『月刊タウン』創刊号に発表。これが漫画家としてのデビューとなる。1968年(昭和43年)には放送作家としても活動していた阿久と組み、『平凡パンチ』にて『パラダ』の連載を開始。本格的な漫画家活動に入る。アクションが主流だった劇画の世界で、男性の添え物的な役回りを強いられていた女性を抒情豊かに描き、注目を集めていく。1972年(昭和47年)、『同棲時代』を発表。うつろいやすい青春のはかなさを、広告会社のOLと無名のイラストレーターの出会いと同棲生活に託して描き、若者の人気を集めて大ヒット。この作品によって“同棲”ブームが起こり、テレビドラマとして放映されたほか、歌謡曲や映画にもなり、同作は"劇画史に一時代を画した"と評された。以後、『修羅雪姫』(原作・小池一夫)、『しなの川』(原作・岡崎英生)など叙情的な名作を次々と発表。その流麗な筆画から"昭和の絵師"と称され、月に400枚の原稿を手掛ける多忙さを極めた。1985年(昭和60年)夏頃からは大判のイラストも制作。将来の個展に備えた意欲的に活動していたが、11月に下咽頭腫瘍で入院。すでにステージ4まで進行しており、1986年(昭和61年)1月11日、死去。享年45。


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学生運動が鎮火し、世相などに関心が薄く何においても熱くなりきれずに興が冷めた傍観者のように振る舞う「しらけ世代」が台頭した時代、物憂げな女性像と独特の劇画タッチで若者の支持を集めた上村一夫。叙事的な作品で独自の世界観を確立し、その後の若者文化に多大な影響を与えた。どこか哀愁漂う女性の絵とそのストーリーが当時の世相と見事マッチし、1970年代前半は漫画に映画にレコードにと彼の作品が次々に溢れた。「昭和の絵師」とまで評されながら、わずか45歳でこの世を去った上村一夫の墓は、神奈川県横須賀市の西来寺にある。墓には「上村家之墓」とあり、左側面に墓誌が刻む。戒名は「隨心院釋一實居士」。

by oku-taka | 2021-08-29 00:30 | 漫画家 | Comments(0)