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十三代目・片岡仁左衛門(1903~1994)

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十三代目・片岡 仁左衛門(かたおか にざえもん)

歌舞伎俳優
1903年(明治36年)~1994年(平成6年)


1903年(明治36年)、実業家・安田善三郎の三男として東京府東京市日本橋区(現在の東京都中央区)に生まれる。生後まもなく東京を拠点に活躍していた十一代目・片岡仁左衛門の養子に入り、本名を片岡 千代之助とする。養子に出された経緯については、善三郎の相手が佐川琴という待合の女将だったからという説と、善三郎が文化の振興を目的にした為という説の二つがあり、いずれも真偽は定かでない。1905年(明治38年)、京都の南座で本名を名乗って初舞台。本名の片岡千代之助を名乗る。1912年(明治45年)父が設立した片岡少年俳優養成所に入所し、少年劇の分野で活躍した。1924年(昭和4年)、歌舞伎座で四代目・片岡我當を襲名。この前後から東京を中心に活動し、九代目・市川團十郎の芸系を受継ぐ七代目・市川中車などについて積極的に学ぶ。また、養父の勧めで、七代目・松本幸四郎、十五代目・市村羽左衛門、二代目・実川延若ら名優に歌舞伎狂言の型を教えられ、後の千代之助にとって貴重な財産となった。1932年(昭和7年)、松竹・新宿第一劇で青年歌舞伎を結成。足掛け七年にわたり座頭として活躍した。1934年(昭和9年)、養父の十一代目・片岡仁左衛門が他界。1939年(昭和14年)には青年歌舞伎も解散となり、再び上方歌舞伎へ移籍する。以後、関西歌舞伎の中心として活躍し、1951年(昭和26年)には十三代目・片岡仁左衛門を襲名。しかし、1960年代に入ってから関西歌舞伎の凋落が著しく、京阪における歌舞伎公演の数が著しく減少した。1958年(昭和33年)、二代目・中村鴈治郎、三代目・實川延若らとともに「七人の会」を立ち上げたが、注目されずに終わる。このような上方歌舞伎の現状を憂い、伝統の灯火を守ることを決意した仁左衛門は、私財を投じて1962年(昭和37年)以降五回にわたって「仁左衛門歌舞伎」と称した自主公演を決行。一方で、高校生を対象とする歌舞伎教室を開催したり、上方の若手役者による「若鮎の会」を主宰して若手俳優の指導など人材育成に努めた。1966年(昭和41年)、歌舞伎座でつとめた『廓文章』の伊左衛門が好劇家から高い評価を受ける。それまで、独特な持味はあるものの手堅いだけといわれていた仁左衛門の演技に変化がおとずれる。その後も女形以外のあらゆる役をこなし、『恋飛脚大和往来』の孫右衛門、『夏祭浪花鑑』の三婦、『天網島時雨炬燵』の治兵衛などは当たり役となった。大一座の興行では、他の幹部俳優を引き立てる脇役だけに甘んじることも少なくなかったが、どんな役でも真摯に舞台を務め続けた。1969年(昭和44年)紫綬褒章を受章。1972年(昭和47年)、人間国宝に認定。同年、日本芸術院賞を受賞。1975年(昭和50年)、勲三等瑞宝章を受章。七十代の後半から八十代にかけて仁左衛門の芸は飛躍的に深化し、1981年(昭和56年)国立劇場で演じた『菅原伝授手習鑑』の菅丞相は絶品との評判を呼び、「天神さま」にあやかる「神品」とまで絶賛された。しかし、この頃から緑内障のため徐々に視力が衰え、最晩年には失明状態に陥ったが、生涯舞台に立ちつづけた。1992年(平成4年)、文化功労者に選出。1993年(平成5年)、顔見世四十一年連続出演の記録を打ち立てた京都南座顔見世における『八陣守護城・御座船の段』の佐藤正清が最後の舞台となった。1994年(平成6年)3月26日、老衰のため死去。享年90。


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関西歌舞伎の凋落を憂い、その復興に生涯を捧げた十三代目・片岡仁左衛門。若くして注目を集める歌舞伎役者が多い中、仁左衛門が名優としての評価が確立されたのは老年期に入ってからと言われている。普通であれば「老い」というものが隠せなくなる70代後半から80代にかけて仁左衛門の演技は驚くほどに深化し、その芸は名優と呼ばれる域にまで一気に達した。特徴的な舌足らずの喋りも、演技になると良い味わいに活きるから実に不思議である。優雅さと気品漂うその演技は、かつて若手スターとして注目された三男の孝夫(十五代目・片岡仁左衛門)へ見事に受け継がれている。十三代目・片岡仁左衛門の墓は、東京都大田区の池上本門寺にある。墓には髭文字で「南無妙法蓮華経」と彫られてあり、裏側に「十三代 片岡仁左衛門」とある。墓誌および戒名はない。
by oku-taka | 2017-09-23 20:02 | 俳優・女優 | Comments(0)